2026/06/28 19:46

夜中の3時2分。
スマホは伏せてある。
眠くないわけじゃない。
ただ、身体が起きることを選んでいる。
暗い天井の質感が、はっきり見える。
夫が単身赴任になった夏から、ずっとこうだ。
「また今日もか」と思う。
何かがおかしいのかとも、思う。
でも病院に行くほどの話でもない気がして、
ずっとそのままにしてきた。
知ったのは、ある夜のことだった。
眠れないまま、夜にただ考えていた。
なぜ夜中の3時なのか。なぜ毎晩なのか。
コルチゾールという物質がある。
ストレスホルモン、とよく呼ばれる。
本来これは、朝に向けて増えていく。
起床の1〜2時間前から分泌が始まり、
身体を「今日に向けて」準備させるのが仕事だ。
ところが、慢性的な心理的負荷が続いた状態では、
このリズムが変わることがある。
本来なら明け方のはずの「準備」が、
深夜のうちから動き始める。
ホルモンの時計が、前にずれていく。
夜中の3時に目が覚めるのは、
怠惰でも、体質でも、異常でもなかった。
身体が張り詰めていた時間を、
ホルモンのリズムとして正直に表していたのだ。
眠れない問題ではなかった。
身体が、慢性的な負荷を記録していた。
それを知ってから、3時の意味が変わった。
「また起きた」が、
「また記録している」に変わった。
どこか、怖くなくなった。
でも、受け入れるだけでは終わらなかった。
リズムを取り戻すには、夜の入り口から変える必要があった。
コルチゾールは、光にも反応する。
夜遅くにブルーライトを浴びると、
身体は「まだ昼間だ」と判断する。
その信号が、本来下がっていくはずのコルチゾールを
夜のあいだも刺激し続ける。
スマホを持ったまま眠ろうとする夜は、
身体にとって、昼間がまだ続いている夜だった。
11時以降のスマホが、ずれたリズムを
さらに前に押し出していたのかもしれない。
あの夜から、就寝前の習慣を変えた。
11時になったら、スマホを伏せる。
代わりに、ソファの後ろからテラコッタ色の光をつける。
明王、という近赤外線ランプだ。
特別なことは、何もしない。
ただその光の中に、10分いる。
本を読んでいるときもある。
何も考えずに、ただいるときもある。
脳が今日を終えることを学び直しているような。
静かな、そんな感覚がある。
就寝前の近赤外線照射が夜間のホルモンリズムに
働きかける可能性を示す研究がある。
照射のタイミング、とくに就寝前の使用が
効果に関わることが示唆されているという。
断言は、しない。
でも、試す理由には十分だった。
3時に目が覚めることは、まだある。
ただ、怖くなくなった。
身体が記録しているとわかったから。
責める相手が、自分じゃないとわかったから。
私は今、3時の天井をただ見上げる。
そして、身体の独り言を、少し聞こうとしている。
あなたの夜中の3時には、何が起きていますか。
もし同じように、夜の長さに戸惑っている方がいたら。
私が頼りにした「テラコッタ色の光」について、少しだけ置いておきますね。

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